第1話 プロローグ
どうやら俺は転生というものをしたようだ。
何を言っているのか自分でもおかしいと思うのだが、たった今、前世の記憶を思い出して絶賛混乱中だ。
そもそも死んだ記憶がないのだが…
今世の俺の名前は広瀬華音。現在７歳の美幼女だ。将来美人になること確定の美幼女だ。うん、つまりTS転生なのだが既に今世で物心ついているためそこは問題ない。記憶を取り戻しても自分が女だという認識がある。俺は私になったのだ！
そして、転生あるあるのチート能力らしきものが生えた。「完全記憶能力」だ。今世で見聞きしたものどころか前世の記憶さえ全て思い出せる。死んだ記憶は無いのにな…寝てるときに突然死したのか…
今世の肉体には前世の脳が入っていないのになぜ記憶があるのか…などはツッコんではいけない。転生ものとはそういうものだ。魂にも記憶領域があるのだろう。
ひとまずは、情報収集だ。家にPCがあるためネットが出来るだろう。
◆
ネットで入手した情報によると
なんとここはパラレルワールドのようだ！！
有名人、アーティストやゲーム、アニメ、漫画など、全てが前世と違う名前だった。 前世のアーティストや有名人などを検索しても一向にヒットしなかった。
ただし、近代までの歴史はほぼ同じで、歴史上の人物などはほぼ同じだ。近代からも歴史上に起こった出来事や技術の進歩、流行などは大体前世と同じ流れになっているようだ。
さらに、前世では昭和最後生まれのおっさんだったのに、今世では2001年生まれの21世紀幼女だ。つまり、現在は2008年。
前世では20XX年までの記憶があるため
平行世界な上に逆行転生でした！！
◆
ふっふっふっふ…
「神は言っている、パクれ！と…」
私の頭の中にはこの世界には無い名作や名曲が山ほどあるのだ！！
天才美少女となってチヤホヤされるんじゃいっ！
お金ガッポガッポ稼ぐんじゃいっ！！
著作権～？知らない子ですね～
平行世界まで取り立てに来れるもんなら来てみろ～！！
ハハハハハー！！
さて、やるとするなら何がいいか…
漫画家？小説家？音楽家？
漫画家は見えてる地雷だな、当たれば大きいがブラックすぎる（勝手なイメージ）
前世の社畜プログラマー時代のち鬱でヒキニートとなった記憶が鮮明に…うっ！
ラノベ作家もなー、大当たりしなければあんまり稼げそうにないし（勝手なイメージ）
やっぱり本気でやるとするならミュージシャンかな。
天才美少女としてチヤホヤされそうだし。ふっふっふっふ…
そうと決まれば楽器の練習とボイトレだ！前世ではギターを趣味でやってたくらいだから基礎から勉強するべきだな。ピアノ教室に通うべきか…
「お母さん、わたし天才アーティストになるからピアノ習いたい！」
「あらあらまあまあ」
◆
そんなこんなで小学校、中学校時代は楽器の練習とボイトレに費やした。
ピアノから入り、あとは動画などを参考に独学でボイトレ、ギター、ベース、ドラム…
一人でバンド組めるぜ！！
うん、正直やりすぎた。
前世ではロックが好きだったからバンドがしたかったんだ。
美少女たちとガールズバンドを組んでメンバーとキャッキャウフフしながらライブしたりチヤホヤされたりしたかったんだ。
あと、洋楽や英語詩の曲に対応するために英語の勉強も頑張った！
さらにDTMにも手を出して、前世の名曲を打ち込みまくった。
すでにストックは1000曲以上…
そう、やりすぎた…やりすぎたんだ。
私は高校に入るまで自分の犯した最大の過ちに気づいていなかった。
◆
2017年4月
「とうとうこの時が来た。世間が私という天才を認識する時がっ！！」
そう、私は高校に入学してから動くと決めていた。
軽音部に入部してメンバーを集めてバンド活動を開始するのだ！
まずは軽音部の見学に行こう！
そしてこの日、私は過ちを犯していたことに気づいた。
「どんな音楽が好きなの～？」
「あっ…えと、あの～…」
（やばい、この世界の音楽あんまり聴いてない！テレビで放送されてた曲くらいしか知らない！！そもそもテレビもニュースくらいしか見ないし！！）
「……………」
「……その……えと…」
（どうしよう！なんて答えよう！！）
「…えーと、楽器は何ができる？」
「…あ、はい…えと…ピアノと…………」
（あ、話題変えてくれた！なんかごめんなさい！えっとピアノとギターとベースとドラムが出来ます。って言っても信じてくれるかな？なんか調子に乗って嘘言ってる奴とか思われないかな…）
「そうなんだ」
「あ、はい」
（あ、考えてる間に時間切れ…ギターもベースもドラムも出来ますが！！？）
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」（汗）
「えっと、ゆっくりしていってね」
「あ、はい」
（ふーっ。なんとかしのいだぜ……うん……死にたい…帰ろ…）
私の最大の過ち…それは…
コミュ障を克服していないということだ！！！
◆
高校に入って一月もたっていないのにもうグループが形成されている。
私は安定のボッチ。
というかクラスメイトと最後に雑談したのはいつだろう…
ここ何年も事務的会話しかしていないような…
アーティスト（になるための）活動が楽しすぎて全く気付かなかった。
前世でも私はコミュ障だったのだ。しかもあがり症。さらにヒキニート。
「バンド組むために話しかけて勧誘とかハードル高すぎ！」
「…あれ？そもそもあがり症の私がライブとか無理じゃね？」
「ラジオ出演とかテレビ出演とかもっと無理じゃね？」
「テレビに出て天才美少女として有名になってチヤホヤされるはずがああああぁぁぁぁぁ！！」
「………詰んだ…」
◆
私は不貞腐れた。
アーティスト活動休止である。
テキトーに前世で流行ったけど今世では無かった設定でオリジナル小説を書いたりしてみた。
え？なぜパクリじゃなくてオリジナルかって？
パクリ作品を世に出したら絶対人気が出て書籍化、コミカライズ、アニメ化の３コンボ確定じゃん。
私はアーティストになるために9年も費やしたんだ。今更ラノベ作家に転向なんて…
うぅっ…まだアーティストに未練が…
そんなこんなで1年ほど悶々としながらも小説投稿サイトにオリジナル小説を投稿していたらちょっと人気が出て書籍化決定した。
「なんでだよ」
◆
くそー私は諦めない！コミュ障でもアーティストになる方法…
ボカロP？
うーんせっかくボイトレしたのが無駄になる。私はボーカルもしたいんだ！
YouTuberになる？
いやいや、顔出しとか無理無理。クラスメイトとかに見られたらと思うと、投稿した3分後とかに削除しそう。
Vtuberになる？
………
Vtuberになる？？
…これは…いいのでは…？
顔出ししなくて済むし。チヤホヤしてもらえるし…。
平行世界から来たという設定（事実なのだが）にすれば、色々と話題も増える！
そうだ！Vtuberになろう！！！
まずはVtuberになるための勉強やで！これでも前世プログラマーやったんや！めっちゃ作りこんだるで！ヴィジュアルは普通に自分の容姿でええわ！美少女やし！よーしやったるで！！
あとがき
新ジャンル ： 転生小説風音楽紹介記事
小説投稿サイトにあった TS転生Vtuberものを読んで、映画イエスタデイの設定を見て（映画は見ていない）思いついた。
音楽の紹介ブログを作ろうと思ったけど、レビューとか書けないし、音楽理論とか分からないし、楽器も詳しくないし。
そもそも音楽なんて（自分にとって）好きか普通（興味ない）か嫌いかしかないんだから音楽紹介記事なんて「これ好きー」ってその曲の動画貼るくらいで十分なんだよな。でもそれだとブログ記事として成立しないし、誰も見ないと思うんだ。友達や自分と趣味が同じ人ならともかく、知らない人が「これ好きー」とか言っても全く興味湧かないし。
というわけで、転生小説風の音楽紹介記事をやってみようと思います。次話から、 架空のVtuberを通して好きな曲や日本の名曲を年代順に紹介していきます。
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